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2010/01/11.Mon

平成21年-春-(37)

 俺は前回から3日後、今回は母親といっしょに父親に面会した。

 精神病院の老年性認知症病棟に入ると、父親はホールでうつろな感じで立っていた。
 前回よりも前かがみで、反応が鈍く不機嫌そうで、裸足だった。

 父親を父親の病室に連れて行き、ベッド端に座らせようとしたが、座ってくれない。

 仕方ないので立たせたまま、俺と看護師の2人がかりで父親にスリッパを履かせた。

 父親の顔をよく見ると、額の一部が少し赤い。


 看護師によると、次のような話だった。

 昨日はなんともなかったので、一人で部屋にいた深夜から早朝の間に、どこかにこすったのではないか。

 急性期病棟と違い、全部屋にカメラはなく、父親の部屋にもなかったので、何があったかはわからない。

 主治医に報告して、必要なら頭部の検査をするとのこと。


 前回の面会は入浴直後で、その時と同じ服なので、上半身だけでもと思って俺と母親で着替えさせたが、父親はどんどん前のめりになるので、大変だった。

 看護師が持ってきてくれたお茶を父親に飲ませる時も、ずっと前かがみの姿勢なので、なかなか飲み込んでくれず、こちらも大変だった。


 病室の窓からは、もう夏の景色が見えるようになっていた。

 冷暖房完備で温度と湿度が一定の病棟の中にずっといて、窓の外を見ようとしない父親に、季節の移り変わりを感じることは難しいだろう…



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平成21年-春
2010/01/10.Sun

平成21年-春-(36)

 俺はケアマネージャーと何度も連絡を取り合い、ようやく、入院前と同じショートステイ・(認知症対応型)デイサービス先が、その2つの組合せで毎週5~6日、父親を受入れてくれる目処が立った。

 ただし、これはあくまでも空き状況についてのことで、そうなるのは約1ヶ月後であり、それに、俺の父親がショートステイやデイサービスを利用できる(他の利用者さんに迷惑をかけない)状態になっていることが前提条件だから…

 俺の父親がショートステイやデイサービスを利用できる状態になったか確認したいということで、ショートステイの担当者ともう1人、ショートステイのスタッフが、父親の様子を見に、入院している精神病院の老年性認知症病棟まで来ることになった。


 その日の午前中、ショートステイ先の2人が来る前に、俺は1人で父親に面会した。

 父親はホールで、うつろな感じで立って(歩いて)いた。

 俺が父親を病室に連れて行き、ベッド端に座らせると、看護師が来て、採血することになった。

 父親は座る姿勢を保っていられず、また、薬の副作用で血が出にくいということで、俺が父親を支え、看護師2人で採血するという形になり、それでも時間がかかった。


 ショートステイ先の2人が病棟に来たのは、昼食が始まる頃だった。

 父親の食事はあいかわらず、おかゆと刻んだおかず、それに水分補給も兼ねたゼリーがついている。

 いつのまにかエプロンをつけさせられるようになっていた。

 ホールのいつもの席で昼食を食べ始めた俺の父親に、ショートステイの担当者が声をかけると、父親は笑顔を見せた。

 担当者の声がけや笑顔がよかったのだろう。それに加えて、やはり父親は、食事が楽しみのようだ。


 その後、俺、ショートステイの担当者とスタッフ、看護師の4人で、面会室で俺の父親のことを話し合った。

 看護師から、まず現在の父親の状態について説明があり、次にショートステイの担当者とスタッフが看護師に質問した。

 その話し合いの内容と、話し合い前後の父親の様子から…

 ショートステイの担当者とスタッフは、俺の父親を「ショートステイとデイサービスで受入れられる」と判断してくれたようだ。



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平成21年-春
2010/01/09.Sat

平成21年-春-(35)

 俺は、市役所で自動車税の減免申請をした。

 現在父親は入院中だが、退院後は、俺が自分の車で父親を通院させるようになるので、自動車税減免の対象になった。

 こういう制度があることは数年前から俺は知っていたが、去年までは納税時期になるといつもよりさらに忙しくなり、普通に納税してしまっていて…

 今年になって、父親が入院したことにより、一人で動ける時間が少し増えたこともあって、やっと申請できた。

 この申請から約20日後に、役所から、自動車税が減免されるという決定通知が届いた。


 この時期に俺は、父親がかつて、自分で処分するために職場から持ってきた個人的な書類(平成13年-春-(1) 参照)を、今さらだが、俺と母親で整理した。

 逆に言えば、これまで、そんな時間がなかったのだ。

 父親が自分で空けたであろうパンチの穴は斜めになっていて、父親がつけたであろうマーカーの線も、まっすぐには程遠い…



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平成21年-春
2010/01/07.Thu

平成21年-春-(34)

 母親は、春先あたりに頭痛がひどくなり、かかりつけの内科医院で診てもらったら、医師から「精神的な部分が大きいようです」と言われ、心療内科の受診を勧められた。

 しかし、母親は心療内科医院を受診したことがなく、内科医院の医師も受診を勧めるだけで心療内科医院の紹介はしてくれなかったので、母親は自分で探すところから始めなければならなかった。

 とはいえ、母親には難しく…

 俺がいろいろ調べて、「ここが良いのでは」と思った心療内科医院に電話してみたら、完全予約制で、しかも「1ヵ月先まで空いていません」と言われた。

 母親は仕方なく、かかりつけの内科医院で出された薬を飲みながら、心療内科の予約日(約1ヵ月後)まで待つことにした。

 その薬でなんとかしのいでいたが、それでも母親の頭痛は徐々にひどくなっていった。

 父親の最初の退院直後にトラブルがあり、その後、父親の今度の退院が近くなって先のことを心配するようになり、俺が特養申込をするたびに母親に報告していた入居待ち人数の多さ、そういったことが母親の頭痛をひどくしているように俺には思えた。


 ようやく予約していた日になり、俺が付き添って(自家用車で送迎して)心療内医院に行った。

 母親は、「はい」、「いいえ」で答える問題がたくさん書いてあるテストや看護師の問診の後、医師の診察を受けた。

 母親に頼まれて、俺も診察室に入った。

 質疑応答の後、医師は、俺の母親は「心身症」で、母親の頭痛は「ストレス性頭痛」と診断した。

 俺は父親のことをもう一度医師に話した上で、「(父親が)いい特養に入居しておちつけば、母の病気は治るでしょうか?」と尋ねると、「そうだろうね。でも、特養に入るのは(入居待ちの人が多すぎて)難しいから」と医師は答えた。


 母親は、心療内科医院で出された薬を飲むようになって、しばらくは副作用が強く出たりしたが、量や種類を調整したら、少しおちついた。

 とはいえ、薬である程度症状が抑えられているだけだろうし、通院は続けなければならない。

 かかりつけの内科医院なら、比較的家の近くだから、運転免許を持っていない母親でも、体調と天気が悪くなければ、一人で自転車に乗って通院することも可能だ。

 しかし、母親がずっと定期的に通院している婦人科、眼科医院などは、バスで行ったら乗り継ぎもあっていつ着けるかわからず、タクシーで行ったら高い料金になってしまう。

 俺が自家用車を運転して母親を送迎するしかない。

 今回の心療内科医院も婦人科医院などと同じで家の近所ではなく、俺のやらなければならないことが、また一つ増えた…



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平成21年-春
2010/01/05.Tue

平成21年-春-(33)

 あいかわらず2~3日に1回、俺一人、あるいは俺と母親の2人で、精神病院の老年性認知症病棟の父親に会いに行っている。

 父親は、眠そう、しんどそう、うつろな感じで立っていることが多い。

 歩く時は身体が傾きがちで壁に頭をぶつけそうになり、ベッドの上では四つん這いで渡るなど、危なっかしい動作が見られるようになった。

 それでも、なんとか俺と母親は、温かい(お湯で絞った)タオルで父親の顔(目ヤニとりから)、耳周りや頭、首周りを拭くことだけは毎回やるようにした。

 また、本人の状態によってだが、鼻毛切り、爪切り、髭剃り、耳掃除、着替えなども、できるだけやるようにした。


 そのような面会をしていたある日、俺が父親のベッドを見ると、サイドレールがなくなっていた。

 父親が、ベッドの上で四つん這いになって渡りながら、サイドレールをまたごうとして危険な姿勢になったということで、危険回避のため、サイドレールをとったらしい。

 サイドレールが無くても、看護師が見守っているし、もし看護師が間に合わなかったとしても、サイドレールがある時の高さより、ない状態の高さから落ちるほうがケガのリスクが少ない、という看護師の説明だった。


 父親の足のむくみは、相変わらずだ。

 病院から引き取る父親の洗濯物の量は以前より少なくなって、さほど臭くない日が増えた。



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平成21年-春
2010/01/03.Sun

平成21年-春-(32)

 父親の入院している精神病院は、ゴールデンウィークの期間、さらに人手不足になってしまっていたようだ。

 ゴールデンウィーク期間中のある日、3日ぶりに父親に会いに行くと、病室のベッド端に座っていて、前回の面会時には剃ってあった髭がだいぶ伸びていた。

 父親は眠そう、無気力そうで、身体が傾きがち。

 それでいて身体を動かしてもらおうとする時は、少し抵抗があった。


 父親は、俺が先日持ってきた介護ズボンを穿いていた。

 介護ズボンのサイズや肌触りは父親に合っているようだが、その金属部分(フックやボタン)が、父親は少し気になるようだ。


 俺がシェーバーで父親の髭を剃っていると、近くで見守っていた母親に、部屋に入ってきた看護師が「お願いします」と蒸しタオルを手渡した。

 母親がそのタオルで父親の顔、頭、首周りなどを拭いていると、また看護師がやってきて、「お願いします」と言ってコップと練り歯磨きのついた歯ブラシを俺に渡した。

 俺は、髭剃りの時と同じように、父親を洗面台の前に立たせて父親の歯をできるだけみがいた。


 蒸しタオルや歯ブラシを手渡されたのは、初めてのことだ。

 面会している時間帯は、前回までと変わらないのだが…


 看護師によると、父親の尿失禁は改善しているとのことで、確かに、受け取った洗濯物の量は、(前回面会して洗濯物を引き取ってから)3日間にしては(これまでより)少なかった。



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平成21年-春
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